耳元でささやく

2008/01/24
ソフィア・コッポラ監督の『Lost in Translation』は、東京を舞台に、中年のハリウッド俳優とアメリカ人の若い妻が出会った話。
浮いた話・・・ではない。
彼は高額のギャラのつまらない仕事で東京までやってくる。妻とは、結婚25年もたてば・・・まあこんなもんでしょ。
彼女は結婚2年目。夫の仕事にくっついて東京にやってきた。ニューヨーク出身、大学は哲学科を出ているが、性格は、かさ高くない。
ただ、夫のキスも、I love youも形だけのことで、彼女の心の満たされなさはぬぐえない。
そんなふたりが、非日常のなかの日常を過ごす。
外国人が日本人の中で浮いちゃって、なんかやだなあ、本国に帰りたいなあという場面は、見ていて落ち着かないので、私は席をはずす。
だから、とぎれとぎれしか見ていないことになるのだが・・・
ラストシーン、仕事を終え、大勢に丁重に見送られ車に乗り込み、ホテルをあとにする彼。うまくお別れをいえなかった彼女を、偶然人ごみで見つける。
車を降り走って彼女のところに行き、耳元で何かをささやく・・・そのことばは聞こえないが、彼女は泣き出す・・・
そのシーンを布団の中にもぐりこんでからも、反復していた。
なんて言ったんだろう・・・君のことを愛してるじゃないよな・・・アメリカに帰ったらまた会おう・・・じゃ泣かないよね・・・
たぶん・・・きっと・・・君は人生をしっかり歩いていけるよ。大丈夫、自信を持って・・・違うかな・・・