クレヨン王国は永遠に
2012/12/05
小学校二年生、おこずかいをもらったすぐあとの土曜日の午後。
いつものように、2軒の本屋さんをまわる。
1軒目は、巣鴨駅近くのアーケードの中の、父が子供のころからあるという古い本屋さん。入れ替わりのない児童書をとっとと見限り、2軒目、巣鴨のお地蔵さん通り入り口近くの、明るい本屋さんへ。
新刊本のにおいを胸一杯にかいで、児童書のところに直行。配置が替っていて、知らない本が入っていた。
『クレヨン王国の十二か月』
すっきりした挿絵も好み♪ファンタジックな世界に連れて行ってくれそうな予感♪
お財布の中身とも、おりあいがついた。
いちもくさんで家に帰り、「ごはんよ~」の母の声で我にかえるまで、私は主人公のユカになりきって、クレヨン王国をシルバー王妃と旅していた。
おおみそか、クレヨン王国王妃の無くて七癖どころか、十二の悪癖に愛想尽かした王さまが家出。探し求めて王妃と小学校二年生のユカが、1月の町から12月の町まで旅をするという物語。
12の悪癖は、ちらかしぐせ、おねぼう、うそつき、じまんや、ほしがりぐせ、へんしょく、いじっぱり、げらげらわらいのすぐおこり、けちんぼ、人のせいにする、うたがいぐせ、お化粧3時間。(最後をのぞき、どれも子供心にぐさっときたけど)
1月の町の白、2月の黄色、3月のピンク、4月の草色、5月の黒、6月のはだ色、7月のみどり色、8月の青、9月の水色、10月の赤、11月の茶色、12月の灰色の、テーマカラーの配置にふさわしい植物や動物が、個性豊かに登場し、地上だけでなく、宇宙や海底、天高く、と縦横無尽に旅をしつつ、王妃が欠点をひとつひとつ悔い改める、という実にみごとな構成!とても児童書なんていうカテゴリーで片付けられない。というより、ごまかしのきかない子供にだからこそ、与えるにふさわしい本なのかもしれない。
後年読むことになる『ナルニア国物語』のベースに流れる宗教観も、『メアリーポピンズ』の異国の風習に戸惑う感じもなく、『ハリー・ポッター』のダークな二元性もない。
昭和30年代の日本人の心や習慣を元にした作品だから、50年近くたっても、読むたびに新鮮で、飽きがこないのだろう。
先日新聞に、著者福永さんの訃報が載っていた。
心よりご冥福をお祈りする。