オクラとゴリ
2007/06/28
夕飯の買い物に行ったやおやさんで、ざるにてんこ盛りになっている奇妙な野菜があった。4色ボールペンほどの太さ。長さはその1.5倍ぐらい。彼女は100円ばかり出して一山袋に入れてもらった。それがオクラだった。当時私の住んでいた東京の一角では見たことがなかった。
帰り道、そそっかしいおばは、オクラと一緒に買った卵10個を落とし、全部割った。
晩のおかずは急遽変更して、バターでいためたオクラの山と卵10個分。糸をひいていたので、卵がくさっていたんじゃないかと思ったら、それはオクラのねばねば。この”豪快”な料理の量にはへき易したが、オクラの味はきらいじゃなかった。
大学2年の夏休み、宮崎に初めてきた。
泊まった家のおばちゃん(現姑あらんだまばーちゃん)が、夕食になすの味噌いためをつくった。
「おいしいよ、食べてごらん」なすの紫色に見え隠れして、緑色のいぼいぼしたのがあったが、何も考えずに口に入れた。しばらくすると、口の中に、強烈な苦味が広がった!
周りを見ると、ちゃぶ台を囲んでいる私以外の全員が注視している。謹厳居士のおじちゃん(故舅あらんだまじーちゃん)も嬉しそうに、私のリアクションを見ている。口から出すわけにもいかず、ごっくんと音を立てて飲み込むと、皆声を上げて笑った。
それが、ゴリ(ゴーヤ)とのはじめての出会い。昔のゴリは今のと種類が違うのか、実ににががった。焼酎のさかなには、あぶって、少し焦げ目をつけたのを、ちょっとしょうゆにつけて食べるのがいいらしい。
当然、当時、東京の私の家の周りでは見たことがなかった。
宮崎に越してきてからも、最初の印象が強烈だったので、すききらいのない私の唯一といっていい、食べられないものだったが、どの家の畑や庭にゴリは植えてある。ほったらかしていても、夏の盛り、あのいぼいぼの”実”が次々とぶらさがる。
ある夏、スライスしてドレッシングをかけて食べたら、さっぱりしておいしかった。暑気払いとして、この苦味が利くんだと初めて分かった。
これからはじまる強烈な南国の日差しのもと、オクラとゴリの出番です。