絹絵画家グェン・ファン・チャンの静寂

2011/08/30

牛にのって川を渡る女.jpgその絵は、痛々しいほど、画面全体に傷が入っていた。
でも、見た瞬間、私の心を鷲掴みにしたのだ。
ベトナムの絹絵画家グェン・ファン・チャンが描いた『牛にのって川を渡る女』
水面から顔をもたげている牛の目も、こちらにおもざしを向けている女性の目も、実にやさしい。
風景や空気から、ゆったり時間が流れる農村をイメージしたが・・・
ベトナム戦争のころは、私は小学生から中学生。新聞テレビはその有様を連日伝え、安保闘争やベ平連やらの活動で、東京の大学は、荒れに荒れていた。
グェン・ファン・チャンが活躍した時代は、まさしくそのころだった。
胸が引き裂かれそうな出来事が、波のようにおしよせだだろうに、彼の現存する絵は、どれも静寂にみちている。描かれた人の目は、おだやか。
『牛にのって川を渡る女』は、修復のために、日本の絵画修復家の岩井久希子さんのものにやってきた。
岩井さんは、この絵の源流を知りたくて、ベトナムへ旅立った。
そのドキュメンタリーが、先日NHKで放映した「旅のチカラ」
岩井さんは、私と同じ歳と知ったとき、彼女の目が、私の目になった。
『牛にのって川を渡る女』は、10月22日から、石川県金沢21世紀美術館で展示されるという。
見てみたい・・・