ピアノの上のクリスマス
2007/12/22
そのころ60歳に手が届くぐらいだっただろうか。
手だけ見ると男の人顔負けのごつさなのに、夏でも冬でも花柄のかわいいブラウス、裸足で真っ赤なペティキュアをしていらした。
海外と取引をされている会社の社長さんがご主人だったからか、それとも昔ピアニストだったからか、毎年夏休み1ヶ月はほとんどヨーロッパで過ごされる。そして敬虔なクリスチャンだった。
習い出して初めての12月。
レッスン室に入ったら、でーんと部屋の真ん中においてあるグランドピアノの上に、ところ狭しと何かきれいな色のものがのっている。
近づいてみると、クリスマスカード。封をあけて、カードの文がよく見えるように置いてある。もっとよく見ると、いろいろな国の言葉で書かれていた。
「先生のお知り合いからですか?」
少しも嫌味なところなく、うふふ、と笑いながら
「すてきでしょ。カードをいただくと、お元気なのねって思うの」
今年5月に買った私のグランドピアノ。置いてあるのは小さなクリスマスツリー。これを置きながら、ちょっとうきうきした気持ちの、昭和40年代ヨーロッパが遠かった時代の、12月のレッスンを思い出した。