鶴見の総持寺

2007/11/25
総持寺参道 「お寺に行くよ」と子供のころ、祖父母から言われると嬉しかった。
神奈川県横浜市鶴見にある曹洞宗総本山総持寺に、ご先祖さまが眠るお墓がある。
参道の脇に、今でこそ鶴見大学が建ったが、幼い弟とかけっこした道は今もかわらない。
広大な境内には仏殿、大祖堂など、たぶん歴史的に重要な文化財が並んでいるであろうが、子供にとっては、いっくら駆けずり回っても叱られない、大好きな場所だった。
昔受付だった建物 古い建造物を江戸時代の風景に見立て、ときどきチャンバラの撮影が行われていた。もしかすると、テレビや映画に映るかもしれないとうろうろしたら、「はい、どいてどいて」と追い払われた。
朝早いと、静寂につつまれた薄暗い板の間で、座禅がくまれていた。
法要に、にぎにぎしい鳴り物もない。
でも、本堂に整然と何百人居並ぶ僧侶の読経のとどろきは、子供心にも感動した。
うちのお墓は、とある一筋の突き当たりから手前ひとつ。
あるとき、そのお墓の場所が、一番奥になっていた。またあるとき、反対側に移っていた。
母は、お墓はときどき動くのよ、と幼い弟と私に言った。
動いたのは2回・・・。そんなばかな・・・。あれは私の夢?
渡り廊下 「そんなことあるわけないじゃないの」
それから10年あまりして、祖母の墓参りのとき、雲つくような大男になった弟に母は言った。
弟はけげんそうな顔をして、私を見た。
「あれ、あんたも聞いてたの?」
弟も目撃していた。お墓は2度動いてた・・・。