ふたりの男と行ったディズニーランド

2010/08/08
ひとりめは父。
結婚してしばらくして、ディズニーランドが開園した。
まだ若くて元気があったころだ。
掃いて捨てるほど来ている来場者(私もそのひとりか)も、1,2時間並ぶアトラクションもものともせず、友達とせっせと遊びに行っていた。
他の遊園地とは違う、何回行っても、何度同じものに乗っても楽しい、不思議なところだった。
たまたま実家に行った時、父に話したら、そのうらやましそうな顔ったらなかった。
私の子供のころ、テレビでやっていた「ディズニーアワー」。夢中で見ていたのを思い出した。
番組の最初に登場する、口ひげを生やしたやさしそうなウォルト・ディズニーおじさんが紹介する、おとぎの国など4つのテーマで、父はウエスタンっぽいのが好きだった。
私は、ミッキーマウスの出てくるのが大好き。
いつかアメリカのディズニーランドに、私を連れて行ってやりたい、というより自分が行ってみたい、そんな感じがありありだった。
父に言った。
「こんどふたりで行こうか?」
断るわけがない。
計画したのが夏場。60歳代で、まだ元気だったけど、夜の部に行くことにした。
入園して、まっさきに父が目指したのは、シンデレラ城。やっぱり・・・
どれだけアトラクションに乗るか、が“勝負”の友達と来る場合と違って、父はおみやげやをじっくり覗く。そしてしきりと私に買ってやるという。
もう「ミッキーの耳」や風船を欲しがる年じゃないのに・・・
どうしても乗ってみたいのがあるという。
「何?」
「ゴーカート!」
本物の免許もないのに、父は上手に運転していた。わざと私の車にぶつけては、子供のように嬉しそうに笑っていた。
「アメリカにいかなくとも、いいんだな」
パレードや花火を見て、大満足の一日だった。
もうひとりは、夫。
宮崎に引っ越す直前、たまたま手に入れたチケットで、初めての夫を連れてきた。
駐車スペースをようやく見つけて入場できたのは、昼前。
まずは昼ごはん食べてから、というので、食事ができるところに行って、メニューを見るなり
「ビールがない」
ディズニーランドは、アルコールはおいてないもん、と言ったら
「帰るっ!」
ご冗談でしょ!このチケット、買ったらいくらすると思ってんのよっ!!
「帰るっ!!!ビールがないっ!!!!」
こういうとき、夫と”真っ向勝負”はだめ。
「もう少しすると、パレードが始まって、本物のきれいなシンデレラや白雪姫のおねーさんが出てくるの。それ見てから、おみやげやさんで、なんか好きなもの買ってあげる。帰りは、大好きな割烹で食事しようよ」
言っていて、ばかばかしくなったけど、なんとしても、このただで手に入れたチケット分、アトラクションに入らないとと、私は使命感に燃えていた。
夫は、”きれいなシンデレラのおねーさん”が効いたのか、おとなしくハンバーガーとコーヒーで済ませ、パレード見学の人ごみに入った。
案の定シンデレラや白雪姫を見たら、彼の顔が輝いた。
間髪いれず、「いまアトラクションすいているから、お化け屋敷いこうよ」
と、 ホーンテッドマンションへ。
次は「おみやげやさん覗いてみようよ」
彼が選んだのは、ビーバーのしっぽ付きの毛の帽子。ずーとかぶっていた。
それからは、私の計画通りスムーズにアトラクションを乗りこなし、夜のパレードと花火を見て終了。
「ようやく、ビールにありつけるな」
しょうがないから、付き合ってやってんだ、ってな顔していたけど、けっこうおもしろがってたじゃないの!