タッタカタッタッター

2007/08/20
20年近く前、平塚市に一軒家を購入して引越しの日、庭の前の道に、茶色いかわいい猫がちぢこまっていた。
近寄ってみると、大きさは子猫より少しおおきいが、雰囲気は"練れた”感じがする。目が寄っていた。夫と即座につけた名前がよりめ。
「よりめちゃん、おばちゃんちは5匹にゃんこを連れてお引越ししてきたの。皆と仲良くしてねっ!」
1階の庭側の戸に猫ドアをつけたら、うちの猫たちは、近所のおともだちを連れてくるようになった。知らない顔がいつの間にか増えている。よりめは、隣の猫で、奥さんが妊娠したら家に入れてもらえなくなり、半分我が家の住人になっていた。ただ、身体が弱いらしく、あまり動かないしご飯も食べない。
ある水曜日、仕事に出かける前にアイロンをかけていたら、パタンと猫ドアが開き、勢いよく、よりめが飛び込んできた。しばらく家に来ていなかったので心配していたが、しっかりした足取りで、タッタカタッタッターと開けっ放しししてあった玄関まで、まっすぐ前を向いて、一直線に走り抜けていった。入院でもして元気になったのかな、と思った。
週末、隣の奥さんと会った。
「うちにいた猫ね、死んだの」えっ!いつ?
「この前の火曜日」えっ?水曜日うちに来たよ。元気よく、走り抜けていったから、よかったって思ったのよ
「ずーっと具合が悪くて、動けなかったの・・・眠るように死んだよ・・・」
ふたりで顔を見合わせ、しばらくお互いの言葉をさくぐりあった。
「・・・きっと、あらんだまさんに、ありがとって言いにきたのよ・・・」
・・・そうね、幻じゃなくて、きっとそう・・・。