山下洋輔、宮崎でガーシュウィンを弾く

2007/10/01
演奏が終わって ピアノ講師を始めたころ、音大を出ていないのが引け目になってはいかんと、練習もかなりしたが、本も片っ端から読んだ。音楽理論から教育方法、果てはジャズピアニストの山下洋輔氏の著作まで。だから私の中では、彼はシャープな文を書く作家のイメージが強い。
その山下洋輔さん、ピアニストとして29日土曜日、県立芸術劇場で、大山平一郎指揮の大阪シンフォニカー交響楽団と競演した。
演目はガーシュウィン作『ラプソディー・イン・ブルー』
ソロで弾くところを、どう”料理して”聞かせてくれるのか、わくわくして席についた。
座ってみて、ちょっと席取り失敗と思った。ピアノ弾きの背中を斜め上から見えるポジションで取ったつもりが、真後ろ。オーケストラの様子はばっちり見えるから、まあいいか・・・。
この曲は、おもちゃ箱のような曲だ。次から次へと、おもしろいフレーズが飛び出す。
ジャズバンド用に作られた曲とはいえ、一応きっちりした楽譜はある。譜面に忠実にピアニストは弾くのだが、山下氏、興が乗ってきたら、どんどんどんどん自分の世界に入っていった。
かなり長く続くソロの部分、楽団の人たちは、嬉しそうな、どうなっちゃうんだろうと興味津々顔をして聞いている。リハーサルしても、そのときと即興部分が違うのだろう。
指揮者の大山さんはさすがに、まじめに譜をおっていたが、きっと「お願い!こっちに帰ってきてね」と心中祈っていたのではなかろうか。
演奏前のプレトークで、「ソロ演奏は一期一会、どこにいくのかは指に聞いて」とおっしゃっていたが、ほんと、その通り。山下洋輔の陶酔した世界に、会場中が浸っている。
曲はクライマックスに近づき、爆発するような演奏になってきて・・・出たっ!鍵盤のひじ打ちっ!出たっ!拳骨でごんっ!平手でばんっ!
会場は拍手が湧き上がった。
演奏が終わって拍手が鳴り止まない。楽団の人たちも舞台を足で踏み慣らし、すばらしい演奏をたたえた・・・。
アンコールは、しっとりと『サマータイム』、そして軽やかに『スイングしなけりゃ意味がない』
楽しい時間をありがとう!