梅の図

2007/02/13
DSCF0803.jpg 毎年2月になると飾る掛け軸がある。『梅の図』
実家の母から何本か送ってもらったうちのひとつだ。大正時代に描かれた、なんの変哲もない墨絵。だが大きなしみがいくつもある。
第2次大戦の最中、昭和19年ごろだと思う。東京が空襲をうけるというので、祖父母は埼玉県幸手に疎開をした。二人の息子のうち長男は南方ですでに戦死、次男(私の父)は戦地にこそ送られていなかったが、兵隊にとられて不在だった。彼らが疎開先に家財道具として運んだ中に、この『梅の図』もあった。
そこで近くの川が洪水で氾濫し、水に浸かってしみができたと子供のころ聞かされた。でも、もっといろいろなことをこの掛け軸を出して飾るとき、話して聞かせてくれたのではないかと思うのだ。どうしてそこに疎開することになったのか、どうやって運んだのか、どんな生活だったのか、どうやって生計を立てていたのか、何を考えて毎日過ごしていたのか・・・残念なことに思い出せない。語り継いでいかなかったら、この先この国は過去を忘れ怖い方に行ってしまうのではないかと、掛け軸を見つつ思う・・・。