西河克己監督の逝去を知って

2010/04/08
高校2年の冬、教室の扉のガラスにボールがあたって、ちんぐわら。
すぐ修理してくれそうもないので、扉の近くに座っていた生徒が、新聞紙を貼った。
教室の窓からの光で裏面が透け、記事はよく見えないのだが、どうやらスポーツ新聞の芸能欄らしい。
部活の帰り、教室に入ろうとして、なにげなくその新聞紙を見た。
大写しの写真に、息をのんだ。
こんな端正な顔の人が、この世にいるのか。
一瞬で、写真の君に、心を奪われた。
まわりを見回すと、誰もいない。
学級委員長としての理性より、女の本能が勝った。
べらっと剥がし、かばんに入れて、何食わぬ顔をして帰宅。
翌朝、「おはよー」と教室に入ると、別の新聞紙が、今度はガムテープでがっちり貼ってある。
「誰か剥がしちゃったんだよ。さむいのによー。しょーがねーよなー」
それは私です、とは学級委員長として、口が裂けても言えないので、
「早くガラス入れてもらえるよう、頼んでおくね」
写真の君は、西河克己監督の映画に、次々と出始めた。
演技がどうの、共演者はどうのは、一切どうでもよく、ただただ、一挙手一投足を見つめているだけの映画鑑賞。
作品は、ぜーんぶ見た。
彼の結婚は、私たちの式の5か月前。
あちらのご夫婦も私たちも、うん十年つつがなく。
写真の君にいだく思いは、今もかわりなく。
三浦 友和21歳のままです・・・
西河克己監督のご冥福を、心からお祈りするとともに、
9組のみんな、寒い思いさせて、ごめんでした。